実装ハンズオン

【n8n】ClinicalTrials.govの治験情報を自然言語で取得するAIワークフロー 概要

更新:

連載シリーズ

ClinicalTrials.gov 治験情報を自然言語で取得するAIワークフロー

全4回・n8n × ClinicalTrials.gov API・Slackで聞いてCSVで受け取る

  1. 概要:背景とAPIの基礎
  2. API検索とデータ整形
  3. 検索条件の抽出と要約生成
  4. CSV生成とSlack返信

目次

  1. 背景・目的
  2. ライフサイエンスでの使用例(Use Cases in Life Sciences)
  3. n8nとは
  4. Clinical Trials.govとは
  5. Clinical Trials.govのAPI
  6. ClinicalTrials.gov検索フローの全体像
  7. 入出力イメージ

1. 背景・目的

新薬開発や医療機器の臨床研究において、「世界中でどのような試験が実施されているのか」を俯瞰することは、競合分析・仮説探索・KOL調査・市場性評価において非常に重要です。

しかし、臨床試験の情報は複数の国や組織に分散しており、手作業での収集には膨大な時間がかかります。そこで研究者や製薬・医療機器企業が最も多く利用するデータベースClinicalTrials.gov です。

これは NIH(米国国立衛生研究所)と NLM(国立医学図書館)が運営する世界最大級の臨床試験レジストリであり、誰でも無料で利用できます。日本の臨床試験情報も多数掲載され、企業のリサーチ実務に欠かせない存在です。

本シリーズでは、この ClinicalTrials.gov の API を活用し、生成AIや n8n と組み合わせて 臨床試験の情報収集を完全自動化するワークフローを紹介していきます。

2. ライフサイエンスでの使用例(Use Cases in Life Sciences)

ClinicalTrials.gov は、製薬企業・医療機器メーカー・研究者・コンサルティング会社など、多様な現場で活用されます。ここでは、HerzLeben がコンサルティングでよく扱う代表的なユースケースをまとめます。

競合分析(Pipeline & Study Landscape

  • 競合他社がどの疾患でどのフェーズの試験を実施しているか
  • 試験の規模、被験者数、介入方法、地域分布
  • 開発トレンドの把握(例:ASO、mRNA、細胞治療など)

② KOL(Key Opinion Leader)探索

  • 各試験のPI(Principal Investigator)や研究拠点から主要研究者を特定
  • 特定領域で強い病院・国・研究グループの把握

市場性評価(Market & Feasibility Assessment

  • 特定疾患領域での試験件数の推移
  • 治療法の成熟度、未充足ニーズの可視化
  • 新規薬剤クラスの実装状況の把握

メディカルアフェアーズやRWEの事前調査

  • Evidence gap の分析
  • 臨床研究計画の競合性チェック
  • Academic 主導研究のトレンド把握

投資・新規事業のスクリーニング

  • 特定領域で世界的に試験が増えているテーマの探索
  • 有望なバイオベンチャーの間接的な調査(治験主体から把握可能)

ClinicalTrials.gov は、単なる「試験検索ツール」ではなく、ライフサイエンス領域の情報収集全体を支える エビデンス・インフラとして機能します。

3. n8nとは

n8n は、プログラミング不要でワークフローを自動化できる オープンソースのオートメーションツールです。Zapier や Make.com に近いツールですが、下記の点でライフサイエンス企業や医療DXに向いています。

■ n8nの特徴

  • ノーコード/ローコードで複雑なAPI接続が可能
  • 自社サーバーにインストールできる セルフホスト対応
  • プライバシー・セキュリティ要件の厳しい医療系でも採用しやすい
  • OpenAI や Gemini などの LLM 連携が簡単
  • JSON や API パラメータの加工が得意
  • 分岐処理・ループ処理も直感的に構築可能

■ ClinicalTrials.gov API × n8n の相性が良い理由

ClinicalTrials.gov API は

  • query.cond(疾患)
  • filter.advanced(フェーズ)
  • query.locn(地域)

など複数のパラメータを組み合わせる必要があり、通常は Python/JavaScript を使ったプログラミングが必要です。

この「複数パラメータの条件処理」を n8n はノー/ローコードで扱えるため、

“Slackで文章を送る → n8nがパラメータを抽出 → ClinicalTrials API検索 → AIが要約 → CSV生成 → 結果をSlackに返信”

といったワークフローを、誰でも簡単に構築できるのが大きな魅力です。

医療・製薬企業が n8n を導入する主なメリット

  • 定型リサーチ作業の自動化(毎週の治験調査など)
  • RPAよりも構築が簡単で柔軟
  • データ分析基盤とAPIをつなぐ中間層として使いやすい
  • LLMと相性がよく、生成AIアプリを内製化できる

HerzLebenでも、メディカルアフェアーズ・RWE・企画部門向けの 自動調査BotAIアプリ開発にn8n を頻繁に利用しています。

4. Clinical Trials.govとは

Clinical Trials.govとは

ClinicalTrials.govは、米国国立衛生研究所(NIH)の国立医学図書館(NLM)が運営する世界最大級の臨床試験登録データベースです。

誰でもアクセス可能で、世界200か国以上からの臨床試験に関する情報(目的や参加条件、募集状況、実施機関など)を提供します。

新薬や治療法の安全性・有効性を検証する試験が中心で、試験の実施者が情報を登録・更新する仕組みです。日本を含む各国の試験も多数掲載されています。

5.  Clinical Trials.govのAPI

ClinicalTrials.govは、世界中の臨床試験情報を機械的に取得できるAPIを提供しています。このAPIを使うことで、治験の病名や介入、地域、フェーズなどの条件を指定して、大量のデータを自動で抽出することが可能です。

APIは主に「query.cond」や「filter.advanced」などのパラメータで検索条件を指定します。例えば、日本における糖尿病の第3相試験を検索するには以下のように記述してコードを書いてリクエストを送る必要があります。

パラメータ 説明
query.cond diabetes 対象疾患名(英語)
filter.advanced AREA[Phase]PHASE3 試験フェーズ(第3相)
query.locn Japan 対象地域(英語)
filter.overallStatus RECRUITING 募集状況(募集中)

このように検索条件を決めれば機械的に取得が可能になるため、定期的な検索や大量検索において便利な一方で、システム開発やプログラミングの知識が必要です。PythonやJavaScriptなどでHTTPリクエストを送信し、返ってきたJSONデータを解析する必要があります。そのため、手軽に利用したい場合や、非エンジニア向けには、APIを直接使うのはハードルが高いです。

そこで、本記事は、n8nのワークフローを用いて、APIの利用をより簡単に自動化する方法を紹介します。

6. ClinicalTrials.gov検索フローの全体像

今回、3つの記事にわたってステップごとに構築するワークフローは以下の流れで構成されます。

  1. Slackで自然な文章を用いてボットに質問を送信
  2. 文章から、生成AIが自動で検索用のパラメータを抽出
  3. ClinicalTrials.govを使ったAPI検索を実施
  4. 検索結果を用いた要約を生成AIが作成
  5. 検索結果をcsv形式で一覧化
  6. AIによる要約と作成したcsvをSlackに返信
ClinicalTrials.gov検索フローの全体像

7. 入出力イメージ

Slack入力例

Slack入力例

Slack返信例

◆要約の返信

要約の返信

◆csvの返信

csvの返信

csvとしても検索結果が保存されるので、単なるようやくにとどまらないリサーチ業務に繋げていくことが可能です。

連載シリーズ

ClinicalTrials.gov 治験情報を自然言語で取得するAIワークフロー

全4回・n8n × ClinicalTrials.gov API・Slackで聞いてCSVで受け取る

  1. 概要:背景とAPIの基礎
  2. API検索とデータ整形
  3. 検索条件の抽出と要約生成
  4. CSV生成とSlack返信